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キャッシュフロー計算書のポイント

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キャッシュフロー計算書

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発生主義、実現主義によって計算される売上や費用は、実際の現金の動きとは異なるため、利益(損失)と現金の増加額(減少額)とは一致しないのが一般的です。

間接法によるキャッシュフロー計算書の作成方法のポイント

① + 当期純利益
② + 減価償却費
③ − P/L 有価証券・固定資産の売却益(売却損ならば+)※1
④ − B/S 流動資産(現預金・貸付金・有価証券以外※2)の増加分(減少ならば+)
⑤ + B/S 流動負債(短期借入金以外※3)の増加分(減少ならばマイナス)
= 営業キャッシュフロー

⑥ - B/S 固定資産(減価償却累計額控除前)の増加分(減少ならば+)
⑦ - B/S 有価証券・貸付金の増加分(減少ならば+)
⑧ + P/L 有価証券・固定資産の売却益(売却損ならばー)
= 投資キャッシュフロー

⑨ + B/S 借入金・固定負債の増加分(減少ならば−)
⑩ + B/S 資本金・資本剰余金(利益剰余金は含まない)の増加分(減少ならばー)
⑪ - 配当金の支払額
= 財務キャッシュフロー

※1:本業ではないから投資キャッシュフロー(⑧)で考慮する
※2:売掛金、棚卸資産等。貸付金や有価証券報告書は、投資キャッシュフロー(⑦)で考慮
※3:買掛金。短期借入金は、財務キャッシュフロー(⑨)で考慮

① + 当期純利益
② + 減価償却費
③ − P/L 有価証券・固定資産の売却益(売却損ならば+)
④ − B/S 流動資産(現預金・貸付金・有価証券以外)の増加分(減少ならば+)
⑤ + B/S 流動負債(短期借入金以外)の増加分(減少ならばマイナス)
= 営業キャッシュフロー

⑥ - B/S 固定資産(減価償却累計額控除前)の増加分(減少ならば+)
⑦ - B/S 有価証券・貸付金の増加分(減少ならば+)
⑧ + P/L 有価証券・固定資産の売却益(売却損ならばー)
= 投資キャッシュフロー

⑨ + B/S 借入金・固定負債の増加分(減少ならば−)
⑩ + B/S 資本金・資本剰余金(利益剰余金は含まない)の増加分(減少ならばー)
⑪ - 配当金の支払額
= 財務キャッシュフロー

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直接法キャッシュ・フロー計算書

そして、「キャッシュ・フロー経営」という用語も生まれました。損益計算書上の利益の追求はもちろんですが、“どれだけのキャッシュを稼ぎ出し、フリー・キャッシュ・フローをどれだけ増やすか”を重視する経営です。最近では不正会計を起こした東芝が、「当期利益至上主義を脱却し」、「キャッシュフローに重点を置いた業績評価」に移行すると宣言しました*。
* 東芝 (2015年9月7日) 『過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ 別紙 再発防止策の骨子について』。

また三菱商事は、収益性の高い資産への入れ替えを促進するために、部門別のフリー・キャッシュ・フローを算出し、部門別の現金収支の管理を徹底していくとしています*。
*「三菱商、現金収支の管理徹底 全部門、3カ年で黒字に」『日本経済新聞』2016年6月23日、朝刊。

2 直接法のキャッシュ・フロー計算書

2.1. 直接法と間接法

*1 他には、特別退職金の支払額、役員退職慰労金の支払額、災害損失の支払額、補助金の受取額、補償金の受取額、保険金の受取額、賃貸料の受取額、移転費用の支払額、などの記載事例があります。 フロー計算書
*2 他には、無形固定資産の取得による支出(売却による収入)、定期預金の預入による支出(払戻による収入)、敷金及び保証金の差入による支出(回収による収入)、短期貸付けによる支出、短期貸付金の回収による収入、長期貸付けによる支出、長期貸付金の回収による収入、などの記載事例があります。
*3 他には、社債の償還による支出、株式の発行による収入、などの記載事例があります。
*4 この調整項目も会社によりますが、20項目前後の調整項目があります(次項参照)。

2.2. 直接法のキャッシュ・フロー計算書の長所と短所

(1)直接法のメリット

*1 「キャッシュ・フロー会計情報と企業価値評価―九州地区の中小企業をめぐる実証分析」 税務経理協会 岡部勝成 2010/03 45ページ。直接法と間接法のキャッシュ・フロー計算書の有用性にかかる書籍や論文を渉猟した限りでは、この文献に長所がもっとも網羅的かつ明瞭に書かれているようでしたのでここに引用させていただきました。
*2 IASB(国際会計基準審議会)が2001年10月に審議し、直接法だけを認めました(原則10「キャッシュ・フロー計算書」)。IASBは、直接法だけを認め、間接法を認めない理由を3点あげており、これはそのうちの1点です。要するに当期純利益に対する調整項目が増えてきて、当期純利益と営業活動によるキャッシュ・フローの差額を理解することが難しくなったということです。ある研究で実際に調査すると、当期純利益に対する調整項目は1社平均16.6項目もあり、そのうち2社は24項目もあったそうです。しかもこの調整項目は分類されておらず、配列の順序も一様ではないため、非常にわかりにくくなっているとされます。(鎌田信夫 (2002年) 「業績報告書としてのキャッシュ・フロー計算書–IASB原則書案に関連して」 『産業経済研究所紀要』 第12号 86ページ。)

(2)直接法のデメリット

3 直接法による作成が今まで難しかった理由

将来キャッシュ・フローを予測する点では直接法の方がよいとされながらも、前項のデメリットにより、直接法を作成している企業はほとんどいません。
東証と名証のそれぞれ第一部と第二部に過去11年間継続して上場していて連結財務諸表を作成している企業1,765社中、直接法を採用している企業は1社もありません。*
* 日本政策投資銀行設備投資研究所編 (2015年) 『産業別財務データハンドブック 2015』 日本経済研究所。また、その他の市場まで含めても、直接法を採用する上場会社は10社程度にすぎないそうです。(桜井久勝 (2015年) 『財務諸表分析〔第6版〕』 中央経済社、100ページ)。

その具体的な原因は、多くの企業は損益計算を中心に組み立てられた会計システムを用いており、直接法に必要なデータを収集する会計システムを持っていないためです。*
* 永田靖 (2010年) 『キャッシュ・フロー会計情報論―制度的背景と分析手法(広島経済大学研究双書)』 中央経済社、91ページ。

4 将来キャッシュ・フローを予測するうえでの有用性

5 TMSで直接法キャッシュ・フロー計算書を作る意義

(1)利益確定を待たずにいつでも見られる フロー計算書
TMSで作る場合は、インプットが毎日銀行から自動受信する銀行明細になります。したがって、決算による利益確定を待たずして、いつでも前日時点のキャッシュ・フロー計算書を見ることができます。

(2)事業ごと、会社ごとなど、柔軟な切り口で見られる
将来キャッシュ・フローを予測するという観点では、連結によるグループ全体だけではなく、事業別や会社別等のセグメントごとに見て分析をしたいはずです。しかし一般に、セグメント別に当期純利益は算出されていません。TMSでは銀行取引1件ごとを集計して直接法キャッシュ・フロー計算書を作成しますので、その表示する切り口を変えることによってセグメントごとの営業キャッシュ・フロー計算書がいつでも見られることになります。

(3)時系列の比較ができる
決算時点だけでなく、常にキャッシュ・フローが捉えられ、データベースに蓄積されているため、時系列で比較をすることができます。四半期ごとに限らず、月次、さらには週次、日次で把握できます。これは、経営計画や事業の進捗を把握するために時系列に見る時には不可欠なことです。とくに、季節性がある事業や企業には月次、週次推移は特に有効であると思われます。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを短縮しようとする企業などは、キャッシュの日次の動き、ときには日中の動きも把握して、非常に精緻な管理をしています。

6 TMSによる直接法キャッシュ・フロー計算書の作成方法

6.1. 基本的な作成方法

6.2. TMSで作る場合の制約
TMSからキャッシュ・フロー計算書を作る場合にも若干の制約はあります。

(1)インプットデータ次第であること
銀行から送られてくる明細のデータでキャッシュ・フローを特定します。明細のデータだけでは不十分な場合、入出金予定のデータで補完します(後述)。これらのデータが正しくキャッシュ・フロー計算書の項目と紐づけられるかがカギとなります。キリバでは、データ上のコード(取引コード、科目コード等)だけでなく、摘要欄の文言もその紐づけのキーとして使えますので、ある程度細かく紐づけられますが、その精度は銀行と予測のデータの内容次第であることは否めません。

(2)TMSを導入できる会社が対象であること
取引銀行からデータを自動で取得できない会社は、キャッシュ・フロー計算書を自動で作成することは難しくなります。当該子会社に対する資本構造や支配力等諸般の事情で、その子会社にTMSを導入できない場合や、その子会社からデータを取得できない場合については、同じ仕組み、同じ粒度で直接法キャッシュ・フロー計算書を作成することはできません。持分法適用会社などは容易ではないかもしれません。

6.3. TMSでの具体的な作成方法
TMSでのキャッシュ・フロー計算書の作り方を、キリバを例に具体的に説明します。キリバでは、グローバルの資金ポジションを一覧表示する「資金ポジションワークシート」を使います。いくつかの切り口で表示できるようになっていますので、キャッシュ・フロー計算書の項目で表示させます。

(1)データのマッピング
銀行取引をキャッシュ・フロー計算書の所定の項目に紐づけて表示するために、各銀行取引に以下の手順でコードを振ります。

(図4)予実の基データからキャッシュ・フロー計算書を表示させるまでの流れ

(2)グループ内取引の扱い
連結会社相互間で発生したキャッシュ・フローの相殺消去については、実際にキャッシュの動きがあるので、そのまま表示されますが、入金側はプラスの数字で、出金側はマイナスの数字で表示され、合計は差し引きゼロとなりますので問題ありません。むしろ純額にならず総額で表示される利点があります。グループで見れば相殺され、個社別に見れば、連結会社取引として表示され、特段の相殺等の操作をすることなく、ワークシートの表示条件を切り替えるだけですみます。

(3)「現金及び現金同等物に係る換算差額」の作り方
この項目はキャッシュ・フロー計算書上で、ただ一つの実入出金を伴わない項目です。為替変動による前期末残高との差額を表示するものですが、実入出金を伴わないため、仮想口座を作り、この換算差額を期末時点のキャッシュ・フローとして作り、この仮想口座に入れます。

6.4. 営業活動によるキャッシュ・フロー(小計より上)のモニタリング
以上でTMSによる作成方法を述べましたが、実務面を考えると意味があるのは、営業活動によるキャッシュ・フローのうち小計以上である、「営業収入」「仕入支出」「人件費支出」「その他の営業支出」に限って作成して、モニタリングしていくことがよいと考えます。

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キャッシュフロー計算書とは?内容やパターンなど基礎知識をご紹介

損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書をまとめて、「財務3表」と言います。
いずれも会社の現状や将来を見据える指標として欠かせないものとなっています。
キャッシュフロー計算書は、損益計算書や貸借対照表に比べて知名度は低いですが、PLとBSの死角であるお金の動きをつかむ重要な計算書。
今回は、経理担当として把握しておきたいキャッシュフロー計算書の基礎知識を紹介します。

  • 投稿日:2017/09/26
  • 更新日:2021/08/27

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書は、英語でCash フロー計算書 Flow Statementで、略してCSと呼ばれています。
PLが1年間の売上や利益の構造を教えてくれる表で、BSは決算日時点における財政状況を映し出した表。
CSは、PLやBSでは読み取れない現金(キャッシュ)の流れを教えてくれます。いわば、会社の家計簿のような存在と言えます。

では、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)で把握できないお金の流れとはどんなものでしょうか。
会社の取引では売掛金・買掛金という信用取引が行われます。
この取引では、売上が計上された時点ではまだ入金されておらず、会計上と手持ちの現金との間にズレが生じてしまいます。

例えば、商品を仕入れてから販売まで30日、販売してから現金が入るまで30日かかる企業の場合、仕入れた商品がキャッシュになるまで計60日を要します。 フロー計算書
しかし、仕入れ代金を支払う期日が仕入れから30日だった場合、30日間は資金不足に陥ります。
こうした会計上は黒字にも関わらず資金不足という状況は、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)では把握できないのです。

キャッシュフロー計算書の内容

投資活動によるキャッシュフローは、設備や有価証券などに投資したり、それを売却したりした時のキャッシュの流れを表します。
一般的には積極的な投資によりマイナスになっている方が望ましいとされます。
プラスの場合は、資産の現金化を示しており、手持ちキャッシュの不足が疑われます。

財務活動によるキャッシュフローは、資金調達の状況を表しています。
借り入れや社債発行などによる資金調達を盛んに行なっていればプラス。
反対に、借入金の返済や社債の償還、配当金の支払いや自社株買いなどを行うとマイナスになります。

キャッシュフロー計算書の例と考え方

営業活動によるキャッシュフロー
項目 考え方
税金等調整前当期利益
減価償却費
受取利息及び受取配当金
売上債権の増減額
棚卸し資産の増減額
仕入債務の増減額
未払い消費税等の増減額
利息及び配当金の受取額 フロー計算書
利息の支払額
企業のキャッシュを生み出す能力を示しています。同業他社と比較して高い場合は儲ける力が強く、マイナスの場合は経営上問題を抱えている可能性があります。ただし、企業のライフサイクルが導入期の場合は、総じてマイナスになるのでその限りではありません。

投資活動によるキャッシュフロー
項目 考え方
定期預金の預入による支出
定期預金の払戻しによる収入
有形及び無形固定資産の取得による支出
有形及び無形固定資産の売却による収入
投資有価証券の取得による支出
投資有価証券の売却による収入
投資に対する企業姿勢を表しています。一般的には積極的な投資によりマイナスになっている方が、企業のあり方として望ましいとされます。営業CFからこの投資CFを引いたものをフリーキャッシュフローと言い、これがプラスなら経営が良好と判断できます。

財務活動によるキャッシュフロー
項目 考え方
借入金の増加額
負債の返済
配当金の支払額
自己株式の取得による支出
自己株式の売却による収入
プラスの場合は、資金調達を行なったことがわかります。マイナスの場合は、有利子負債の削減や配当・自社株買いなどによる株主還元が行われたと判断できます。
現金及び現金同等物の増減額
現金及び現金同等物の期首残高
現金及び現金同等物の期末残高
1年間で全体のキャッシュがどれだけ増減したかがわかります。

キャッシュフローのパターン

3つのキャッシュフローとそれぞれが示すポイントについて簡単にふれました。
この3つのキャッシュフローは、事業のライフサイクルに応じたパターンがあります。このパターンを考慮に入れないと正しい判断ができません。
最後に、事業ステージにおけるキャッシュフローのパターンを見てみましょう。

企業の導入期は、キャッシュが出ていくことが多く、営業活動によるキャッシュフローは通常マイナスになります。 フロー計算書
投資も積極的に行う必要がありますから、投資活動によるキャッシュフローもマイナス。
当然、資金も調達してこなくてはなりませんから財務活動によるキャッシュフローはプラスになります。

そして、成熟期になると営業活動によるキャッシュフローは大きくプラスになり、投資活動は落ち着いていき、緊急の資金調達需要は減少し、やがて返済して行くことで財務活動によるキャッシュフローはマイナスになっていきます。
これはあくまで典型的なパターンで、積極的投資を続け投資活動によるキャッシュフローが常にマイナスの企業もあります。
企業の戦略や方針にも左右されることを念頭に入れましょう。

キャッシュフロー計算書は、2000年より上場企業に開示が義務付けられたもの。そのため、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)と比較して馴染みが薄いかも知れません。
しかし、PLとBSの死角となるお金の動きをつかめる上、企業の営業力や投資戦略を把握することができる重要な指標です。
数字の意味を読み取る力を養うには、とにかく多くのキャッシュフロー計算書を見比べること。
上場企業のキャッシュフロー計算書は決算短信で誰でも見ることができますので、様々な同業他社を比較して一つ上の経理マンを目指してください。

キャッシュフロー計算書とは?作り方の流れとチェックすべきポイント

貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S)とは、資産・負債・純資産など、一定期間の財政状況を示した書類です。貸借対照表は期末時点で会社にある資産を示すのに対し、キャッシュフロー計算書は資産の増減の量と原因を表します。 損益計算書(P/L) 損益計算書(P/L)とは、企業の経営成績を示した決算書です。年間の収益・費用・利益の金額が表示され、経営状態の把握に役立つほか、本業とそれ以外の利益をそれぞれ読み取れます。それに対してキャッシュフロー計算書では、本業の一会計期間における現金収入・支出を示す点が異なります。

キャッシュフロー計算書の作り方の流れ

STEP1:必要書類を用意する

STEP2:キャッシュフローを3つの項目に分けて作成する

投資活動によるキャッシュフロー 「投資活動によるキャッシュフロー(投資キャッシュフロー)」とは、企業の投資活動におけるお金の流れを示す項目です。たとえば、有形固定資産や有価証券の取得・売却のように、設備投資や他社への投資や回収などが対象となります。科目は「有形固定資産の取得による支出」といった形で表し、未払金や未収入金の残高と調整しながら数値を算出します。 財務活動によるキャッシュフロー 「財務活動によるキャッシュフロー(財務キャッシュフロー)」とは、企業の資金調達活動におけるお金の流れを示す項目です。資金の調達・返済にともなう増減額が明らかになります。資金の調達の例として、事業資金の借入れや、株式の発行などが挙げられます。返済の例は、事業資金の返済や、配当金の支払いなどです。科目は「長期(短期)借入れによる収入」といった形で表します。

キャッシュフロー計算書のチェックポイント

営業活動によるキャッシュフローのチェックポイント

投資活動によるキャッシュフローのチェックポイント

投資活動によるキャッシュフローは、数値がマイナスであるほど積極的な投資を行っている状況と読み取れます。設備投資を行っている企業では、マイナスになるのが一般的です。また、資金に余裕があり、株式の購入や貸付けを行う企業でも、支出が多くなる傾向にあります。

最低限おさえておきたい~連結キャッシュ・フロー計算書の基礎知識

連結キャッシュ・フロー計算書は、1会計期間におけるキャッシュ・フロー(資金の増減)の状況を利害関係者に報告するために作成される財務諸表です。連結キャッシュ・フロー計算書は、連結財務諸表の1つではありますが、連結貸借対照表や連結損益計算書といった他の連結財務諸表とは作成方法が異なります。
連結キャッシュ・フロー計算書は、他の連結財務諸表のように連結仕訳を積み上げて作成するわけではないからです。
そんな特殊性もあり、上場企業の経理担当者の中でも作成できる方は非常に少ないのが実情ではないでしょうか。
今回は細かい論点の説明を省略し、連結キャッシュ・フロー計算書に関する基本的な内容をお伝えします。

連結キャッシュ・フロー計算書の作成目的

まずは、なぜ連結キャッシュ・フロー計算書が必要となったのか、その作成目的についてお話しします。
連結キャッシュ・フロー計算書は、2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられるようになりましたが、第1四半期及び第3四半期においては、作成を省略することが認められています。ただし、第2四半期においては、第2四半期連結累計期間に係る連結キャッシュ・フロー計算書を開示しなければなりません。
同計算書の作成が必要となった理由は、 損益計算書がキャッシュ・フローから離れてしまったため です。
損益計算書は、1会計期間の経営成績を測定するために発生主義に基づいて作成されますが、期間損益を適正に計算することを重視しているうちに、キャッシュ・フローからどんどん離れていき、キャッシュ・フロー情報を読み取ることが難しくなってしまいました。利益の計上は必ずしもキャッシュの増加につながるわけではないので、損益計算書上は利益が出ているのに手元の資金がなくなり黒字倒産する会社も多数あります。
このような背景から、キャッシュ・フロー情報に特化した財務諸表である連結キャッシュ・フロー計算書が必要となったのです。

連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法

次に連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法についてお伝えします。
連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、 「原則法」と「簡便法」の2つの方法があり、会社はどちらの方法を 採用してもよいことになっています。
「原則法」とは、親会社及び子会社の個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算し、連結会社相互間におけるキャッシュ・フローに係る内部取引を相殺して連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
これに対して「簡便法」とは、個別キャッシュ・フロー計算書は作成せず、連結貸借対照表の前期末残高と当期末残高の差額、当期の連結損益計算書や当期の連結ベースでの各勘定科目の増減明細などをもとに連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
「原則法」は、親会社及び子会社がそれぞれ個別キャッシュ・フロー計算書を作成しなければならず、連結会社相互間のキャッシュ・フロー取引の相殺が煩雑になることから、 実務上は「簡便法」を採用する会社が多いのではないかと思われます。

連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法

次は連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法についてお話しします。
上の図のとおり、連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法としては、「直接法」と「間接法」という2つの方法があります。
両者の違いは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法であり、いずれの方法を採用しても「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法に違いはありません。
「直接法」は、営業収入、原材料または商品の仕入支出、人件費支出並びにその他の営業支出と主要な取引ごとに連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを総額で表示する方法です。
一方の「間接法」は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をスタートとして、減価償却費などのキャッシュの増減を伴わない非資金損益項目、営業活動に直接関係する資産(売掛金やたな卸資産など)・負債(買掛金など)の増減額などを調整して、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを表示する方法です。
「直接法」は主要な取引ごとに資金の出入りを表示するため、キャッシュ・フローの状況を読み取りやすいという長所がある反面、作成するのに大変手間がかかるという短所があります。
「間接法」は連結損益計算書の税金等調整前当期純利益を起点として、非資金損益項目や営業活動に直結する資産・負債の増減額などを加減算してキャッシュ・フローの状況を間接的に表示することから、資金の出入りに関する情報が分かりにくいという欠点がありますが、連結貸借対照表や連結損益計算書などに基づいて比較的容易に作成できるという利点があります。
そのため、 ほとんどの会社は「間接法」を用いて連結キャッシュ・フロー計算書における「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示を行っています。

連結キャッシュ・フロー計算書の仕組み

続いて連結キャッシュ・フロー計算書の仕組みについてお伝えします。
連結キャッシュ・フロー計算書は、企業の活動を「営業活動」・「投資活動」・「財務活動」の3つに分けて作成します。
これらの活動から得られるキャッシュ・フローのことを、それぞれ「営業活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」といいます。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、商品の販売による収入や商品の仕入れによる支出といった本業から生じる資金の増減額を表示します。この区分では、法人税等の支払額といった投資活動と財務活動のいずれにも分類できない項目も記載されます。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、固定資産・株式などの取得による支出や売却による収入などから生じる資金の増減額を表示します。この区分からは会社が将来のためにどのくらいお金を使ったかを読み取ることができます。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、借入れによる収入や借入金の返済による支出といった資金の調達や返済による資金の増減額を表示します。
ここで、連結キャッシュ・フロー計算書に記載されている情報を読み取るうえでの注意点があります。
同計算書に記載されているすべての活動でキャッシュがプラスになっていれば優良企業だというわけでもありません。
一般的には、成熟期に入った企業は営業活動によるキャッシュ・フローが黒字、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローが赤字というパターンが多いと言われています。本業が好調でキャッシュが増え、将来の利益につながる設備投資などが積極的に行われ、余剰資金が借入金の返済や株主への配当金の支払いなどに充てられるからです。
連結キャッシュ・フロー計算書における営業活動・投資活動・財務活動のキャッシュ・フローの赤字と黒字のパターンについては、表面的に眺めるだけでなく、前年からの変化や中身などについて総合的な視点から分析する必要があるかと思います。

連結会計の中でも連結キャッシュ・フロー計算書の作成業務においては、固有の知識やスキルが必要となり、担当者への引継ぎがしづらく作業が属人化しやすいといった特徴があります。
しかし、 経理担当者が連結キャッシュ・フロー計算書の基本を学習するとともに、業務を細分化し作業の難易度に応じて、経理部内にて役割を分担するといった工夫によって、属人化を防ぐことができると考えます。
本ブログを連結キャッシュ・フロー計算書に関する基本の理解に役立てていただきたいと思います。

■連結キャッシュ・フロー計算書の作成目的
損益計算書がキャッシュ・フローから離れてしまったことで、キャッシュ・フロー情報を読み取るのが難しくなり、黒字倒産する会社が多数発生したため、キャッシュ・フロー情報に特化した財務諸表が必要となった。
■連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法
連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、「原則法」と「簡便法」の2つの方法があり、会社はどちらの方法を採用してもよいことになっている。
■連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法
連結キャッシュ・フロー計算書における「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に係る表示方法としては、「直接法」と「間接法」の2通りあり、ほとんどの会社は「間接法」を採用している。
■連結キャッシュ・フロー計算書の仕組み
連結キャッシュ・フロー計算書は、企業の活動を「営業活動」・「投資活動」・「財務活動」の3つに分けて作成する。

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