しかし、ねずみ講は明確な犯罪であるのに対し、マルチ商法はさまざまな規制を掛けられているものの、一応は合法です。
マルチ商法とねずみ講の合法・非合法を分ける要素は、どこにあるのでしょうか。
それぞれの違いを説明すると共に、マルチ商法やねずみ講の被害に遭わないための方法を紹介します。
京都,滋賀,奈良で刑事事件と少年事件に強い弁護士をお探しなら「あいち刑事事件総合法律事務所-京都支部」
京都市左京区 在住のAさんは、マッチングアプリで知り合った女性Vさんをデートに誘い、左京区内に出かけることとなりました。
しかし、AさんはVさんとデートをするつもりではなく、Aさんが販売会員となっている販売会社Xの会員に登録するよう勧誘するつもりでした。 連鎖販売取引
Aさんは、Vさんを 京都市左京区 内の建物に案内すると、Aさんと同じ販売会員であるBさんと一緒に、販売会員に登録するよう勧誘しました。
Vさんは帰宅すると、 京都府下鴨警察署 に「デートと騙されて マルチ商法 の勧誘をされた」と相談。
捜査の結果、Aさんは違法勧誘による 特商法違反 の容疑で 京都府下鴨警察署 に逮捕されてしまいました。
(※令和3年11月11日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・マルチ商法とは
いわゆる マルチ商法 とは、すでに販売会員になっている人が会員になるように他の人を勧誘し、さらにそこで会員になった人がまた他の人を勧誘して会員を増やしていくという販売形態のことを指します。
マルチ商法 は、他にもMLMやネットワークビジネス、ネットワークマーケティングと呼ばれることもあります。
マルチ商法 という言葉はあくまで一般で呼ばれている俗称のため、明確に法律で定義されているわけではありません。
マルチ商法 と聞くといいイメージのない方も多いかもしれませんが、 マルチ商法 =必ず違法なものというわけではありません。
マルチ商法 という言葉が使われる際には、会員が新規の会員を勧誘して増やしていく販売形態全般を指す場合もあれば、そのうち悪質・違法なもののみを指す場合もあります。
違法な マルチ商法 の中には、無限連鎖講、いわゆるねずみ講と呼ばれる違法なものもあり、ねずみ講については「無限連鎖講の防止に関する法律」という法律で禁止されています。
・マルチ商法と特商法の「連鎖販売取引」
マルチ商法 は、 特商法 (正式名称「特定商取引に関する法律」)で「 連鎖販売取引 」という取引として制限を受けています。
特商法第33条第1項
(略)「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下この章及び第五章において同じ。)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、販売の目的物たる物品(以下この章及び第58条の21第1項第1号イにおいて「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章及び第58条の21第1項第4号において同じ。)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第58条の21第1項第4号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。
条文が長く分かりづらいかもしれませんが、
①物品の販売や有償で行う役務の提供の事業で
②物品の再販売・受託販売・販売のあっせんや、役務の提供・あっせんをする者を
③特定利益=取引料、加盟料、紹介料などが得られるといって誘い 連鎖販売取引
④特定負担=商品の購入や役務の提供の対価の支払いや取引料の提供などを伴う取引をするもの
が「 連鎖販売取引 」であると定義されています。
例えば、「会員になれば割安で商品を購入できるため、他の人を勧誘して商品を売れば割安で購入できた分儲かる」「新規会員を入会させれば紹介料がもらえる」といった形で勧誘を行い、取引をするために入会金や保証金、サンプルの商品代などの金銭的負担が生じるといった形態は、この特商法の「 連鎖販売取引 」に当たることとなります。
マルチ商法 と呼ばれる販売形態は、この形態に当たるため、「 連鎖販売取引 」として 特商法 の制限を受けることとなるのです。
特商法 などの特別法は、条文が長かったり多かったりすることもあり、なかなか分かりづらいことも多いです。
だからこそ、 特商法違反事件 などの当事者になってしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
刑事事件専門 の 弁護士 が、初回無料法律相談や初回接見サービスを通じてご相談者様の不安の解消に努めます。
![]() | ![]() |
- 短大時代の友人に突然呼び出され行くと連鎖販売の勧誘をされました。
その友人とは毎月四人のグループとして会うことはしていましたが二人きりで会うことは短大時代から今まで一度もありませんでした。こちらとしてはその友人が何かみんなの前では言いにくい話でもあるのかと思いわざわざ新幹線に乗って会いに行きました。正直彼女には裏切られたという気持ちを感じました。
いろいろ勧誘について調べましたが勧誘するにはまず呼び出す時に自分がどの会社の人間で勧誘をすることを知らせなくてはならないとなっているようでした。
彼女に対して何か公な場で間違い、違反を指摘することはできないのでしょうか。 - ペンネーム「西子」様
連鎖販売取引
第1 意見の趣旨
国は、連鎖販売取引における被害を防止するため、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)について、以下のとおり改正を行うべきである。
1 概要書面・契約書面の記載事項の追加
特定商取引法及び同法施行規則を改正し、連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結するまでに交付すべき概要書面(特定商取引法第37条第1項)及び連鎖販売取引についての契約を締結した場合に交付すべき契約書面(同条第2項)につき、次のものを記載事項として追加すべきである。
(1)統括者(特定商取引法第33条第2項)がその統括する連鎖販売業を開始した年月
(2)最近3事業年度における①事業年度ごとの連鎖販売契約(特定商取引法第37条第2項)の契約者(加入者)及び解除者(退会者)の数、②事業年度末の連鎖販売加入者の数
(3)最近3事業年度における連鎖販売契約についての、①商品又は権利の種類ごとの契約の件数・数量・金額、②役務の種類ごとの契約の件数及び金額
(4)最近3事業年度において連鎖販売加入者が収受した特定利益(年収)の平均額
2 特定負担についての契約を締結する者の説明義務
特定商取引法を改正して、連鎖販売業を行う者(連鎖販売業を行う者以外の者がその連鎖販売業に係る連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結する者であるときは、その者)は、連鎖販売取引に伴う特定負担をしようとする者(その連鎖販売業に係る商品の販売若しくはそのあっせん又は役務の提供若しくはそのあっせんを店舗等によらないで行う個人に限る。)とその特定負担についての契約を締結するまでに、その者に対し、次に掲げる事項について説明しなければならないものとするべきである。
(1) 連鎖販売取引 収受し得る特定利益の計算の方法
(2) 特定利益の全部又は一部が支払われないこととなる場合があるときは、その条件
(3) 最近3事業年度において連鎖販売加入者が収受した特定利益(年収)の平均金額
(4) 連鎖販売契約を行う者その他の者の業務又は財産状況や特定利益の支払の条件が満たされない場合などにより、特定負担の額を超える特定利益を得られないおそれがある旨
3 22歳以下の者との間の連鎖販売取引の禁止と民事効
22歳以下の者との間で連鎖販売取引を行うことを禁止すべきである。また、これに違反した場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象とするとともに、連鎖販売加入者のうち、20歳(2022年4月1日に予定されている成年年齢引下げ後は18歳)から22歳までの若年者については、当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
4 利益収受型物品・役務の取引等に関する連鎖販売取引の禁止と民事効
金融商品まがいの取引、商品預託取引、投資用DVD・ソフト、仮想通貨投資等の利益収受型物品又は役務の取引に関する連鎖販売取引を行うことを禁止すべきである。また、これに違反した場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象とするとともに、連鎖販売加入者は当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
5 借入金又はクレジット等による連鎖販売取引の勧誘の禁止と民事効
特定負担の支払方法につき借入金、クレジット等の与信(返済までの期間が2か月を超えない場合を含む。)を利用する連鎖販売取引の勧誘を行うことを禁止すべきである。また、これに違反した場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象にするとともに、連鎖販売加入者は当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
6 適格消費者団体の差止請求権の拡充
前記第3項から第5項において提案する取消権の対象となる各違反行為を、特定商取引法第58条の21に定める適格消費者団体の差止請求権の対象に追加すべきである。また、当該違反行為が一旦中止された場合であっても、再開されるおそれが認められるときは、差止請求が可能であることを明示すべきである。
第2 意見の理由
1 マルチ取引被害の現状
(1)全国の状況
消費生活センターによせられる連鎖販売等のマルチ取引に関する近年の相談件数は、毎年1万件強となっており、20歳代の若年者からの相談が増加傾向にある [1]。2018年度においては、商品に関するマルチ取引の相談件数5,036件のうち20歳代からの相談は、1,945件(38.6%)、役務に関する相談件数5,490件のうち20歳代からの相談は2,288件(41.7%)を占めている[2]。 連鎖販売取引
最近のマルチ取引は、従来主流であった健康食品や化粧品等の物品の販売よりも、各種の投資取引、アフィリエイト等の副業、暗号資産(仮想通貨)等の利益収受型の物品・役務等を対象とする、いわゆる「モノなしマルチ商法」が多くなっており、インターネットやSNSの利用も背景となって特に若年者にそうした傾向が顕著である[3]。
(2)沖縄県の状況
ア 相談件数等
沖縄県においても、マルチ取引に関する相談件数は、2015年度109件、2016年度132件、2017年度116件、2018年度69件、2019年度100件となっており、2018年度にやや減少したものの基本的に100件台が続いている[4]。特殊な販売購入形態のうち、訪問販売や電話勧誘販売の件数が減少する一方で、マルチ取引については減少の傾向が見られない。
また、沖縄県において、2019年度は、マルチ取引における相談の中で投資商品に関するものが最も多く、他の物品・役務の件数の3倍以上であった[5]。
沖縄県は親族や友人関係が濃い地域であり、マルチ商法が広がりやすいと指摘されている。人間関係を壊したくないがゆえに断れない者や勧誘者を信頼しきってしまう者が多いものと考えられる。連鎖販売取引とは異なるが、持続化給付金の不正受給者の数が短期間で拡大していることからも、リスクのある「うまい話」が人づてに広がりやすい面があることが窺える。
イ 若年者の被害について
2017年には、沖縄県内において、大学生などの20代の多くの若者が被害を受けた「名義貸し事件」が発生した。この事件も、大学内や地域の人間関係の繋がりを通じて、被害が拡大したものである。 連鎖販売取引
同事件では、多数の若者が、「事業への投資で資金集めをしており、借り入れた金を預けると報酬がもらえる」等と勧誘され、勧誘元へ貸金業者等から借り入れた金銭を預けたり、キャッシングカードをそのまま預けたりしたが、途中で勧誘元の返済が滞り、残額について貸金業者等への返済義務を負うこととなってしまったものであり、県内の500人以上の若者が被害を受けた。
当該勧誘行為は、大学内の先輩後輩の関係等を通じ、SNSの利用も相俟ってマルチ的に広がった(勧誘元へ新たな取引者を紹介した場合、紹介料が発生する仕組みとなっていた)。近しい者からの儲け話に対して、その危険性について十分に認識・検討できないまま契約を締結してしまうという傾向が顕著に表れた事件であり、沖縄県内に衝撃を与えたものである。
また、2019年には、県内の高校生の間で仮想通貨の投資話が広がっていたことが発覚したが、これについても、SNSでの情報や先輩からの声かけ、同級生・知人等の声かけで広がったものであった[6]。県教育庁が緊急に調査したところ、勧誘を受けた生徒がいる学校は30校で、勧誘を受けた生徒数は134名にも上った。
このように、沖縄県においても、SNS等の利用により、若年者の間でマルチ商法及びマルチまがい商法による勧誘行為が広がっている。
3 提言
(1)概要書面・契約書面の記載事項の追加、特定負担の説明義務
連鎖販売契約は、連鎖販売組織に加入することで当該加入者及び他の構成員の販売活動により利益を収受することを目的とした投資取引の一種と考えることができる。
そうであれば、投資対象である事業の概要、特に加入者数・退会者数・売上高などの推移や加入者が収受した特定利益の金額等の概要を開示すべきである。
また、連鎖販売取引は、その特質上、親しい者から勧誘において「必ず儲かる」などの不実告知・断定的判断の提供といった不当勧誘が行われ、簡単に収入が得られると誤認して契約を締結する者が少なくない。そうした不当勧誘や誤認に基づく被害防止のため、連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結しようとする者に対し、少なくとも上記第1の2記載の事項について説明すべきである。
(2)22歳以下の者との間の連鎖販売取引の禁止と民事効
近年は、未成年者と比較して、成年して間もない若年成人の消費者相談が多く、その契約金額も高額になる傾向がある。また、契約する商品・サービスについても、「サイドビジネス」や「マルチ取引」に関するものが上位となっており、社会経験が乏しい若年者を狙い撃ちする悪質な事業者の存在も指摘されている[7]。
沖縄県でも、2019年度は、19際以下の未成年からの相談は、739件であるのに対し、20代からの相談は2,488件となっている。さらに、相談者のうち、17歳以下の平均契約取引額が16万8183円、18~19歳が18万5,533円であるのに対し、20代の平均取引額は50万4,418円と高額となっている[8]。
また、日本の高等学校卒業者に占める大学、短期大学及び専門学校への進学率は約71.1%に及んでおり[9]、20代には、学業に従事しているため就業していない若年者が多く存在している。このような若年者が社会経験の乏しいままマルチ取引に誘い込まれて多額の債務を抱える事例も多く報告されている。 多額の債務を負った学生が更に追い詰められれば学校を退学したり、あるいは勧誘する側に回って学校から懲戒処分を受けたりといった深刻な事態にも至りかねない。
こうした若年者のマルチ取引では、学校の同級生や先輩、職場の同僚など親しい者や目上の者から勧誘されたり、インターネットやSNS等で知り合った者から飲食やセミナーに誘われたりするなどして、儲け話を持ち掛けられるケースが多い[10]。しかも、前述のとおり、新規加入者が後続の加入者を順次勧誘するという特性を持つマルチ取引において、新規加入者が自分の受けた説明内容を理解しないまま、「必ず儲かる」などの不実告知や断定的判断の提供、長時間の説得などといった不当な勧誘が行われやすい。
したがって、少なくとも22歳以下の者との間においては、連鎖販売取引を行うこと自体を適合性原則に違反する具体的な類型として禁止すべきである。
さらに、規制の実効性と被害救済の観点から、この禁止に違反した場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象とするとともに、社会生活上の経験不足に乗じた幻惑的な取引の勧誘により困惑状態で契約締結に至る類型(消費者契約法第4条第3項第3号以下参照)に準じて、連鎖販売加入者は当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
(3)利益収受型物品・役務の取引等に関する連鎖販売取引の禁止と民事効
健康磁気治療器等の販売預託取引を展開して破綻したジャパンライフ事件(2018年3月破産手続開始決定)や、テレビ電話用アプリケーションの販売預託取引を展開したWILL事件(2019年7月業務停止命令)は、 連鎖販売取引の仕組みを用いた勧誘活動により大規模被害に発展した。
若年者を対象とする連鎖販売取引では、投資用DVDや投資用ソフトの販売など高い収入が得られると称する物品・役務を販売するケースが多く見られる。
前述のように、沖縄県においても、2019年度は、マルチ取引における相談で最も件数が多い取引は投資商品であり、「名義貸し事件」や高校生の仮想通貨の問題も、投資話や仮想通貨について勧誘がなされている。
金融商品まがいの取引、現物まがいの商品預託取引、投資関連の情報商材等の利益収受型物品・役務の取引においては、勧誘する者がその仕組みやリスクについて正確かつ十分な説明を行う義務を負うべきであるが、鎖販売取引において、勧誘された新規加入者がさらに勧誘を行う際に、かかる説明義務を十分に果たせるとは考え難い。
また、友人・知人等の親しい物からの勧誘の場合は、「必ず儲かる」などの不実告知や断的判断の提供といった不当な勧誘が行われやすいことから、被勧誘者の冷静な投資判断を妨げるおそれも大きい。
しかも、近年、若年者を中心に広がっている「モノなしマルチ商法」では、各種の事業、不動産、暗号資産(仮想通貨)等への投資などによって儲かると勧誘されるが、事業者の実態や連絡先が分からない、連絡手段がメール等に限られるなど、一度被害に遭ってしまうとその回復は困難な場合が多い。また、特定負担を伴う契約を締結させた後に、新規加入者を獲得することによって利益が得られると告げてマルチ取引に誘い込む、いわゆる「後出しマルチ」と呼ばれる事例も出現している。
このように、利益収受型物品・役務の取引に関する連鎖販売取引は、販売目的物と販売システムによる二重の利益が収受し得るとする仕組みの性質上、そもそも適正なリスク告知がなされることが想定困難であり、構造的に見て誤認を招く販売方法である。実際にも、利益収受型物品・役務の取引に関する連鎖販売取引により深刻な被害を多数発生させている状況に鑑みれば、その取引を行うこと自体を禁止すべきである。さらに、規制の実効性と被害救済の観点から、この禁止に違反した取引を行った場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象とするとともに、連鎖販売加入者は当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
(4)借入金、クレジット等による連鎖販売取引の勧誘の禁止と民亊効
マルチ取引の勧誘に際し、消費者金融や学生ローンから借入れをさせて購入代金を支払わせるケース、クレジットで購入させられるケースなどが見受けられる[11]。
前述の「名義貸し事件」においても、若年者がターゲットとなり、貸金業者で借り入れをさせて、その金銭を預けさせていた。
資金がない者が、借入金やクレジット等によってマルチ取引を行う場合、期待した利益が得られなければ、被勧誘者が多額の負債を抱えるなどのリスクが大きい。また、借入金の返済やクレジット利用代金の支払に窮した被勧誘者が利益を得、又は損害を回避するために友人や親族などに対して無理な勧誘を行うことも予想され、周囲との人間関係を決定的に破壊してしまうことにもなり得るものである。
そこで、特定負担の支払方法に借入金、クレジット等の与信を利用する連鎖販売取引に伴う契約を勧誘する行為は、若年者に対するものに限らず、特定商取引法第34条に規定する禁止行為に新たに加えることなどによって禁止すべきである。そして、これに違反した場合、特定商取引法第3章における行政処分の対象とするとともに、借入金等によって特定負担を支払って契約しても返済額を上回る利益が確実に得られるかのような断定的判断の提供がなされることが強く推認される点で、構造的に誤認を招く販売方法であることや、規制の実効性と被害救済の観点から、連鎖販売加入者は当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができるものとすべきである。
ここでいう「与信」とは、手持ちの資金がない者を儲け話で射幸心をあおり、借入金やクレジット等によるマルチ取引へと誘引する行為を禁止する趣旨から、割賦販売法が適用されない返済までの期間が2か月を超えない支払方法なども含め、負債が発生するような資金調達手段による取引全てを対象とすべきである。
(5)適格消費者団体の差止請求権の拡充
適格消費者団体の差止請求権は、消費者庁や都道府県による法執行の補完的機能を担っているものであるが、都道府県の行政処分の効力が当該都道府県に限定されるのに対し、適格消費者団体の差止請求は全国的に効果を及ぼし得る。
したがって、全国的に発生するマルチ取引による被害を防止するためにも、適格消費者団体の差止請求権の対象が拡充されるべきであり、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者が、意見の趣旨第3項から第5項までにおいて提案している取消権の対象となる各行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体において差止請求ができるものとすべきである。
なお、現行法上、連鎖販売取引に係る差止請求権を規定している特定商取 引法第58条の21は、差止対象行為を「不特定かつ多数の者に対して(中略)現に行い又は行うおそれがある」ことを差止請求の要件としているところ、当該違反行為が一旦中止された場合であってもその前後の状況などから再開されるおそれがあると認められるときは、これを防止して消費者の利益を保護するために差止請求が可能であることを明文で規定すべきである。
連鎖販売取引に係る自主行動基準
はじめに
本自主行動基準(以下「ガイドライン」という。)は、商品の愛用者等が独立事業主として営業活動に参画することで当該商品や役務サービス等を提供する事業形態(「特定商取引に関する法律」(以下「特商法」という)に定義する「連鎖販売業」)について、その取引を適正にし、業の健全な発展を期すことにより消費者等の正しい理解と認識を得て、当該ビジネスに対する社会的評価を高めることを目的に、公益社団法人日本訪問販売協会会員(以下「会員」という。)の総意により策定したものである。
商品の愛用者等が営業活動に携わるこの事業形態は、一部の心無い事業者のために消費者からの信頼を著しく損ねており、本来この形態が有している流通機能面の優れたところが社会的な評価を得ることなく見過ごされてきた。しかし、家計収入を補填するための副収入を求める主婦や、定年後の仕事として生き甲斐を感じている夫婦、あるいは更なる収入増を目指して独立起業する個人などに対し、この業界は広く就業・就労の機会を提供してきたこともまた事実である。その事実を社会に理解されるためにも、このビジネスに関わるすべての者が遵法精神を持ち、また個々の法規制の次元に留まらない高度のモラルをもって業を営む必要がある。
具体的には、連鎖販売取引の規制はもとより、無店舗個人を相手に営業所以外の場所で取引をするという点において連鎖販売取引も訪問販売に該当しうることを理解し、訪問販売の規制も含めた諸法令による規制を遵守しなければならない。そのうえで、連鎖販売取引を主宰する者は、特商法の定義する「統括者」としての法的責任を負うのみならず、個々のビジネス加盟者を教育・指導・管理することで健全なビジネスを実現し、連鎖販売取引という流通形態の社会的評価を高めていく使命を負うのである。
公益社団法人日本訪問販売協会(以下、「当協会」という。)は、当該事業形態が社会に受け入れられ、消費者から信頼される事業形態として認知されるよう、その「在るべき姿」に向けて以下に掲げるガイドラインを定め、会員(その系列にある事業者を含む。以下同じ。)は本規定の遵守を約束するものである。
(1)情報の開示について
会員は、情報開示のために交付する書類等については、相手方の理解を容易にするため、分かり易く見易いものを作成し、そのうえで書面の交付に加えて口頭による補足説明を行う等、相手方の理解力に合わせた情報の提供に努めるものとする。
また、当該ビジネス組織への勧誘に関して広告を行う際にも、相手方が得ることのできる報酬について表示あるいは説明する場合には、過大な期待を抱かせることのないよう、正確かつ客観的な情報を開示し、具体的で分かり易い根拠の明示に努めるものとする。
1)禁止すべき事項
①稀有な収入例を挙げて、又は誇大な表現で収入を強調すること
・月収130万円の明細書を見せるなど稀有な収入例を示し、誰でもそのような収入が可能であるかのように説明する
・「一攫千金、絶対儲かる」などと説明する
②マージンが得られるから支払可能として高額品の購入を勧めること
・ビジネス加入に際し、「人を紹介すればそのマージンで支払が可能」などと不確実な収入をあたかも確実であるかのように説明し、高額商品の購入を勧める
③名義の貸し借りを前提として、又は、個人情報を虚偽記載させて契約させること
・若年の為、母名義の契約を教唆する
・「代金は自分が払う」として登録名義を借りる
・与信が通らない場合に、氏名以外虚偽の内容を契約書に記載するよう指示する
④借金をすすめること
・「絶対成功する、販社の商品は素晴らしいので、お金を借りてでも参加すべき」などと説明し、借金を勧める 連鎖販売取引
⑤仕事の為には当然購入が必要として不要不急のものを購入させること
・「ビジネス登録には一定量の商品購入が義務である」などとして、必要のない商品の購入を強要する
⑥ビジネスプランなどの内容を十分に説明せず、ビジネスという認識を持たせることなく契約させること
・在庫なしのはずが、実際は在庫がないとできないプランであることを説明しない
・「環境の話をするだけ、物品販売ではない」と友人を誘う
⑦当該ビジネスに勧誘する目的を隠して呼び出すこと
・ビジネスの勧誘であることを告げず、「会いたい」「会社が主催するイベントへの招待」などと言って知人宅に呼び出す
⑧求人広告で、特定利益・特定負担等を正しく告知せずに販売組織に誘引すること
・販売組織への誘引であるにもかかわらず、登録料や報酬等を記載せずに「収入を得たい方募集」などというチラシを配付する
⑨相手方の承諾のないまま、電子メールにより広告または広告と受け取られる恐れのあるものを送りつけること
⑩国、その他の公的機関が認めた組織・ビジネスプランであるかのように告げること
・事実に反して国から認可を受けているビジネスであると説明する
⑪人に迷惑を覚えさせる形で、強引執拗に勧誘すること
・相手が断っているにもかかわらず良いものだから分かって欲しいと執拗に勧誘する
2)別途定める「商品別禁止事項」についても、会員の主宰するビジネスで取り扱う場合は同様である。
(4)返品(買戻し)制度について
会員は、連鎖販売業を行う場合、あるいは主宰するビジネス組織の加入者にそれを行わせる場合は、商取引に不慣れな無店舗個人を保護するため、購入商品等の返品制度を設け、以下に規定する加入者がクーリング・オフ期間経過後において、当該ビジネスから離脱(脱会等)した場合、購入(仕入れを含む)した商品の返品を当該契約の相手方に書面により申し出た場合は、以下に定める基準に従って返品の受付処理を済ませ、返品商品の受領日後速やかにそれに伴う清算が完了するよう、必要な措置を講じるものとする。ただし、「特定商取引に関する法律」による連鎖販売契約の中途解約・返品ルールが適用される場合においては本項を適用しない。
会員は、返品を受けた加入者と連帯して当該商品の返品によって生ずる債務の弁済の責任を負う。なお、返品を受けるべき加入者がすでに当該ビジネス組織を脱会している等、返品の受付が困難な場合は、会員が最終的な責任者として当該返品の申し出に対応するものとする。
当該返品(買戻し)制度の内容については、特商法で規定する連鎖販売取引の法定書面に記載して相手方に明示しなければならない。
<返品が可能な商品の範囲>
販促品、サンプル等を含む全ての商品(自家消費用を含む)で、返品申出日から遡って1年以内に契約した未使用品(使用品であっても販売担当者等が使用・消費させた場合は返品が可能)とする。
ただし、次の商品は返品の対象とはならない。
1)再販売した商品
2)自らの責任で滅失・毀損した商品
なお、次の商品については、予め返品の対象とならない旨を書面(当該返品規定に関して記載された書面)に記載して相手方に明示している場合は、当該対象から除外することができるものとする。
1)品質保証期間・賞味期限を経過した商品で且つ引渡しを受けた日から起算して90日を経過した商品
2)期間限定・地域限定などの限定販売商品(通常の販売では扱われない商品)で且つ引渡しを受けた日から起算して90日を経過した商品
(5)その他の遵守すべき事項について
会員は、以上に掲げるものの他、次の事項について必要な措置を講ずるものとする。
1)加入者に対する教育について
①傘下のビジネス組織に加入するすべての者に対し、適切な教育制度を設け、特商法のほか関連する法令(例えば、消費者契約法、個人情報保護法、景品表示法、医薬品医療機器等法など。)及び本ガイドラインに基づく教育の徹底を期し、その資質の向上に努めるものとする。
②加入者に対し当該連鎖販売業に必要となる許可、届出、登録、税金を含む法的義務について必要な教育を実施するものとする。
2)苦情処理体制の確立について
①当該ビジネスを巡り問題が生じないよう、苦情の予防に最善の努力を払うとともに、消費者・加入者等が容易にアクセスできる相談窓口を設け、そこに寄せられた声に対しては常に真摯な姿勢で受け止め、生じた苦情の適切かつ迅速な処理に努めるものとする。
②さらに、加入者が独立自営業者であるとしても、連鎖販売取引においては統括者がビジネスに関する問題解決を図らなければならない、との認識を持ち、受け入れ態勢・処理のための指揮連絡等の体制を整えるよう努めるものとする。
③本邦外で会員に係る苦情が発生し、当該国でその解決が困難な場合は、必要に応じ当協会がその解決に係る業務を実施する。この場合は、当協会と協力して当該苦情の解決に努めるものとする。
3)勧誘に係る説明等の適正化について
商品等の販売あるいはビジネス参加の勧誘に関して、その説明やデモンストレーションを実施する場合は、虚偽若しくは誇大なものとならないように、事実に基づき正確かつ適正に行われるよう加入者への指導の徹底に努めるものとする。また、加入者への報酬は、当該加入者とそのダウンラインの販売及び個人消費等に基づいて支払われるものであること、単に他の者を販売システムに加入させることだけでは報酬は得られないことについて説明を行うよう指導に努めるものとする。
4)加入者の脱会に伴う債権債務関係の接続について
加入者が当該ビジネスを離脱することにより、当該離脱者の上位者あるいは下位者等との間において、ビジネス上の債権債務関係が切断される事態が生じた場合には、それら加入者が不当に不利益を被ることのないよう、その関係を接続するための措置を実施するものとする。
5)他社及び他組織の加入者への勧誘について
他社及び他組織の加入者を組織的に引き抜く行為は、それが商業倫理にもとる場合は、かかる行為を行わぬよう、また当該組織内の加入者に行わせぬよう健全な勧誘活動の展開に努めるものとする。
6)取引の相手方として不適当と考えられる者への勧誘について
加入者が未成年、成年に達したばかりの者、学生、成年被後見人・被保佐人・被補助人などビジネス活動を行う者として不適当であると考えられる者への勧誘を行わないよう、周知徹底を図るものとする。
7)ビジネスに係る取引状況等の開示について
加入者に対しては、当該ビジネスに係る取引状況等(販売額、購入額、収支の詳細、手数料、ボーナス、割引高、商品発送、キャンセル、その他の関連データ)を必要に応じ報告するとともに、とくに金銭の支払い等に関してトラブルを生じないように、情報の開示に努めるものとする。
8)在庫の適正化について
加入者が持つ商品の在庫量は、当該加入者の販売能力、商品の競争力と市場環境、企業の返品・返金方針、商品の経時変化等を考慮して過剰なものとならないように、在庫量に係るチェック管理体制を確立し、適正在庫に努めるものとする。
9)販売促進及び訓練のための材料・資料等について
ダウンライン等に提供される販売促進材料又は訓練材料(それらは、道具・器具、若しくは、書籍・雑誌・書面などの物品に限らず、有償で行う役務の提供、ダウンロードできるプログラム等電磁的な情報材料などを含むすべての様式が該当する。)が加入者によって作成される場合は、それらの材料・資料等が、当該作成者及びそのダウンライン等の営業現場においてどのように使用又は販売されているか、次の点についてその実態の把握に努めるものとする。
ⅰ)関連する法令に違反しないよう会員が遵守しているものと同等の基準の材料のみを提供していること
ⅱ)他の販売員に当該材料の購入を強制していないこと
ⅲ)当該材料を販売等する場合は適正な価額(販売等により過大な利益をもたらすことがない価額)であること
ⅳ)会員と同等の返品規定が用意されていること
ⅴ)会員の名称、住所、電話番号が記載等(説明書の添付書面に記載されていることなどを含む。)されていること
また、上記により把握した実態が、会員の定める規約等に違反し、又は相手方に誤認を与え、詐欺的なものである場合は、その提供及び販売を中止させる等の必要かつ適切な措置を速やかに実施するものとする。
10)加入者が当該ビジネス以外の職に就いている場合について
加入者が当該ビジネス以外の職に就いている場合は、その就労上の規則等(就業規則や服務規程等)を遵守し、係る業務に支障を来たすことのないよう指導を徹底するものとする。
附 連鎖販売取引 則
本ガイドラインは理事会の議決日(平成14年3月28日)を制定日とし、同年6月6日から実施する。ただし、「(4)返品(買戻し)制度について」の規定は、その実施を平成15年1月1日からとし、それまでの期間は「いわゆる消費者参加型の訪問販売に係る自主規制要綱」に規定する「(3)返品(買戻し)制度について」の規定を適用する。
なお、本ガイドラインの実施日をもって「いわゆる消費者参加型の訪問販売に係る自主規制要綱」は廃止する。
『マルチ商法』と『ねずみ講』、それぞれの違いと身の守り方
『マルチ商法』と『ねずみ講』は、どちらもある販売組織の会員が甘い言葉で組織外の人を勧誘し、次々と会員を増やしながら連鎖的に販売取引を行っていくという共通点があります。
しかし、ねずみ講は明確な犯罪であるのに対し、マルチ商法はさまざまな規制を掛けられているものの、一応は合法です。
マルチ商法とねずみ講の合法・非合法を分ける要素は、どこにあるのでしょうか。
それぞれの違いを説明すると共に、マルチ商法やねずみ講の被害に遭わないための方法を紹介します。
ねずみ講はなぜ違法なのか
“ねずみ算”とは、多産で知られるねずみの増え方に例えた和算の一つで、このねずみ算になぞらえた違法ビジネスのことを、ねずみ講と呼びます。
アメリカ生まれといわれるねずみ講は、1970年代に日本でも大きな被害を引き起こしました。
『無限連鎖講』とも呼ばれる通り、会員が無限に増えていくという特徴があり、最終的にはシステム自体が必ず崩壊します。
つまり、紹介者が増えるほど自分が儲かる仕組みになっているため、ねずみ算と同じように、倍々ゲームで会員数が増えていくのです。
ピラミッドが小さい時期は、うまく回るかもしれませんが、人口は有限であることや入会を拒む人がいることを踏まえると、無限に会員が増え続けることはありません。
必ずいつかは破綻し、大勢の子会員以下に大きな経済的損失を与えます。
マルチ商法は合法だが禁止事項も多い
一方で、マルチ商法は、特定商品取引法で連鎖販売取引に分類されている合法のビジネスです。
連鎖販売取引(法33条)には、以下の定義があります。
1.物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
2.再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
3.特定利益が得られると誘引し
4.特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む)をするもの
このことからもわかる通り、マルチ商法とねずみ講の最大の違いは、販売する“商品”の有無になります。
ねずみ講では自分が勧誘して入会した人の会員費が自分や上のメンバーに分配されていくのに対し、マルチ商法は実際に会員が商品を販売して、売上を得ることで組織が成り立ちます。
ねずみ講と同じピラミッド型のビジネスですが、自分が収入を得られるのはひ孫会員までなど、収入にできる会員の階層が決まっています。
また、販売力があれば孫会員やひ孫会員でも先に入った会員を追い抜くことができるため、商品が流通している限り、健全に働くシステムであるという点が、違法と判断されない要因になっています。
マルチ商法から身を守るためには
もし、目的を告げずに誘われ、後々マルチ商法だと判明した場合や、「絶対に儲かる」などの誘い文句で勧誘された場合などは、これらの禁止事項に抵触するため、全て違法と見なされます。
まずは相手の主張に疑問を持つことが重要です。
また、怪しい勧誘をきっぱりと断る強い意思も大切です。
“絶対に儲かる話”などは世の中に存在せず、そのような話を持ちかけてくる人は、最大限警戒する必要があります。
少しでも勧誘に強引さや違法性を感じたら、警察の相談窓口や国民生活センターなどに連絡しましょう。
コメント