財務諸表の概要 と 貸借対照表の見方 を前回までお送りしてきましたが、今回は損益計算書の見方をご説明します。
貸借対照表が「ある時点の企業の財政状態」を表す財務諸表であるのに対して、損益計算書は「一定期間における企業の経営成績」を表す財務諸表です。企業は営業活動とそれに付随する活動によって利益を獲得しています。
売上からザックリ集計した費用を差し引いて「儲けはいくら」といったやり方を“損益計算書とは ドンブリ勘定”といいますが、このやり方では利益を正しく測定することはできません。
経理部門では企業のすべての取引を複式簿記のルールにもとづいて、それらを売上に直接関係するものか、あるいは営業活動全般に関するものかなどを区分して、勘定科目という単位で集計し損益計算書を作成します。
では、損益計算書で計算される「利益」をみてみます。
利益の計算では獲得した収益からそのために支出した費用(コスト)を差し引いて計算していきます。売上高から純利益を計算するまでの流れをみていきましょう。
損益計算書とは
損益計算書とは、
その名の通り、 損(経費)と益(収益=売上)を計算した書類です。
どの会社の損益計算書も以下のような形をしています。
これから説明で使う決算書は、
創業1年目の 第1期の決算書 と仮定します。
売上高
商品を売って得たお金 です。
損益計算書の上の方に、
「令和×1年4月1日から令和×2年3月31日まで」
とあるとおり、 この期間に売った 金額となります。
売上原価
売った商品 を仕入れるのにかかったお金です。
例えば、
商品を@120×10個=1,200で仕入れて、
半分の5個を@200で売ったとすると、
売上は@200×5個=1,000、
売上原価は@120×5個=600となります。
売った分だけが売上原価 です。
変動費になるものが多いです。
売れ残った@120×5個=600は在庫 となります。
財産として、後で説明する 貸借対照表 に表示されます。
売上総利益
売上1,000マイナス売上原価600=売上総利益400です。
商品を売ったことで得たもうけ です。 粗利益 とも呼ばれます。
販売費及び一般管理費
仕入以外で売上を得るために使ったお金 です。
人件費や家賃、水道光熱費、通信費などがこれに含まれます。
ほとんどが固定費とよばれるものです。
営業利益
売上総利益400マイナス販売費および一般管理費200=営業利益200です。
会社が目的とする事業=本業から得られた利益 です。
売上1,000から、
その売上を得るためにかけた会社事業全体の努力800
(=売上原価600+販売費及び一般管理費200)
を引いた 事業全体から得られたもうけ=営業利益 です。
営業外収益と営業外費用
営業 「外」 というとおり、 営業の逆の意味 です。
本業以外による収益、費用 です。
例えば、飲食業を本業とする会社が、
株への投資など、副業でお金を得た場合、
本業以外の収益として、営業外収益となります。
借金をした場合に払う
金融機関への支払利息は営業外費用 損益計算書とは となります。
売上を得るためではなく、
借金をするためにかかったお金と考えます。
経常利益
営業利益200+営業外収益10マイナス営業外費用60=経常利益150です。
「経常利益」とは、
平常、通常時の、毎年どおりの活動による利益
という意味です。
毎年どおりの活動とは何かというと、
本業の活動は当然そうです。
営業外収益、営業外費用のところで説明した
副業や資金調達も、会社にとっては毎年毎年行われてもおかしくない、
毎年どおりの活動といえます。
毎年どおりの本業のもうけ(営業利益)に
毎年どおりの本業外のもうけ(営業収益、営業費用)を合わせた
毎年どおりの活動で得られたもうけ=経常利益です。
特別利益と特別損失
「経常利益」の 「経常」という意味の逆 になります。
平常、通常ではない
異常時の、毎年どおりではない活動による収益や費用 です。
基本的に、毎年毎年発生しない特殊、特別な収益、費用です。
例えば、
天変地異や火災などの事故による商品の消失は特別損失ですし、
火災保険などから保険金が下りた時は特別利益になります。
補助金収入も特別利益になります。
税引前当期純利益
経常利益150+特別利益0マイナス特別損失50=税引前当期純利益100です。
毎年どおりの活動によるもうけ(経常利益)に
毎年どおりではない活動によるもうけ(特別利益、特別損失)を合わせた
すべての活動によって得られたもうけ=税引前当期純利益 です。
法人税等および当期純利益
税引前当期純利益100マイナス法人税等40=当期純利益60です。
税金を引いて、最終的に会社に残る
税引後の当期純利益が損益計算書の一番下にきます。
この数字が プラス なら 利益 が出ていて 黒字、
マイナス なら利益はなく、 損失 が出ていて 赤字 となります。
損失 になる場合、それぞれ
売上総 損益計算書とは 損失 、営業 損失 、経常 損失 、当期純 損失 といいます。
損失になった数字の前に ▲ を付けることもあります。
どんな損益計算書が良いか
当たり前ですけれども、
当期純利益 になっている 黒字 の損益計算書が良いです。
かつ、 営業利益 もでていて 本業も黒字 になっているのが良いです。
営業利益と経常利益のどちらが重要かについては
人によって意見が分かれますけれども、
個人的には 本業からの利益、営業利益が重要 だと思います。
みなさま本業を行うために会社を設立したはずです。
本業が赤字で、営業損失が出ているにもかかわらず、
「副業や投資収入で経常利益が出てるからOK!現状維持で問題なし!」
としてしまうと、そもそもの会社の存在意義、
設立した意味が分からなくなってしまいます。
営業損失=本業の失敗です。
片手間で行う副業や投資収入は不安定 な可能性がありますし、
本業でがっちり営業利益を出せる会社の方が良い と思います。
融資の際、会社に借金返済能力があるか評価されますけれども、
借金返済能力とは、安定して利益を出せる能力 です。
安定して営業利益を出せるのなら、
確実にお金を返済できる会社として高く評価してもらえます。
一方、
営業損失だったけれども、特別利益で保険金収入や補助金収入があり、
最終的に当期純利益で終えた会社があったとします。
この場合、金融機関の印象はあまりよくありません。
「特別利益」が意味するとおり、
保険金収入や補助金収入は今年だけ だからです。
来年は確実に赤字、返済能力は低い と思われ、
融資判断にマイナスです。
創業して間もない頃は、思うように売上があがらず、
営業利益を出すのは難しいかもしれません。
じょじょに営業損失を減らし、営業利益に向かうのが理想です。
企業会計原則を知り、損益計算書と貸借対照表を大掴みしてみよう
A) 真実性の原則
企業は、株主や従業員、仕入先、納品先、金融機関など多くの取引関係の上に成り立っています。これらの方々を利害関係者(ステークホルダー)と言い、彼らにとって企業の経営成果を示す「決算報告書」は今後の取引における重要な資料となります。そのため、記載内容が真実でなければ誤った判断がなされ、それは損害を生み、いずれ信頼の損失につながってしまいます。そのような事態を招かないためにも、真実な報告を提供することは重要なこととなります。
B) 正規の簿記の原則
企業会計期間に発生したすべての取引について、適切な帳簿に記録することを求められています。記録するものには仕訳帳や現金出納帳、総勘定元帳などがあり、これらに記録することによって「損益計算書」と「貸借対照表」が正しく作成されることになります。
C) 資本取引・損益取引区分の原則
資本取引とは、株式の増資や減資など資本の増減を伴う取引を言います。また、損益取引とは、企業活動に基づいて行われた財・サービスの売買・提供など営業活動上の取引を言います。この両者は明確に区分され、例えば、資本取引を行って増えた資金(増資)を損益取引の売上として記録することはできません。
D) 明瞭性の原則
損益計算書や貸借対照表における適切な区分と科目の配列が求められ、また、企業が採用している会計方針については注記して示すことが求められています。
E) 継続性の原則
企業の成長を調べるには、前々からの決算報告書と比較することになります。そのため、企業が採用した会計処理の方法をむやみやたらに変えると比較できなくなり、“利益操作”とみなされる恐れがあります。正当な理由があれば変えることが認められますが、基本的には変更しないで継続性を求められます。
F) 保守主義の原則
企業活動においては最悪の場合も想定しなければなりません。そのための蓄えが認められています。例えば、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合に備えて、実際は発生していない貸し倒れを一定の割合に基づいて計上する「貸倒引当金」があります。
G) 単一性の原則
企業は、IRや税務申告、金融機関から融資を受ける場合など、さまざまな決算報告書を作成することがあります。そのいずれも、同一の会計記録から起こし、正規の簿記の原則に則って作成されたものであることが重要です。
(3)損益計算書と貸借対照表及び財務分析
a) 損益計算書
企業が1年間に営んだ経営成績について収益と費用及び利益を計上したもので、次図のような構成になっています。
b) 貸借対照表
資金の調達と運用の財政状態について資産と負債、純資産を計上したもので、貸借対照表の右側が資金の調達源泉を示し、左側が資金の運用形態を示しています。左右各々の合計額が一致していることから「バランスシート」とも呼ばれます。
c) 財務分析
企業の経営成果を分析し、問題点や今後の道筋を導出するために財務分析は重要なものです。財務分析には多くの分析指標がありますが、次の4つが代表的です。
また、「10の財務指標」(https://www.keieiryoku.jp/category/guide/)も参照することをお勧めします。
① 収益性分析:企業がどれだけ効率よく利益を計上したかをみるもので、売上高に対する指標と資本に対する指標の2つがあり、代表的な指標には「売上高経常利益率」や「総資本経常利益率」があります。
② 成長性分析:前年度と比較してどれだけ伸びたかみるもので、代表的なものに「売上高成長率」があります。
③ 生産性分析:社員や設備をどれだけ効率よく活用しているかみるもので、「労働生産性」や「労働装備率」があります。
④ 安全性分析:代表的な指標には、金融機関等から借り入れしている流動負債の返済に際して、その支払い能力をみる「流動比率」や、総資本に占める自己資本の割合をみる「自己資本比率」があります。
(4)まとめ
「企業会計原則」を理解し、適切な運営と記帳を心がけ、多くの利害関係者に対して皆さんがWin-Winになるように本稿の内容を再確認してみてください。
会社設立のミチシルベのお役立ちコラム
『会社設立のミチシルベ』のカネコです。
企業や法人が活動するためには、どうしても資金が必要です。
そしてその資金は適切に計算して管理される必要があり、しかるべき書類にまとめることが要求されています。
会計上、そのような資金の流れをまとめた書類を収支計算書と呼び、企業等はその作成が義務付けられています。
また収支計算書以外にも、損益計算書といった書類も存在し、両者は会計上明確に区別されています。
今回は、収支計算書及び損益計算書について説明し、その書き方や両者の違いについても解説します。
収支計算書とは?
収支計算書を一言でいうと、一定期間内の収入と支出をまとめた計算書類です。
どのような収入源によりいくら手に入れて、その収入をどのようにして使ったのかが、収支計算書類を見ればわかるようになっています。
収支計算書類は、書き方において厳密な型式というものは存在せず、必要な項目さえ記入されていれば、その書き方は自由です。
今回は、基本的なフォーマットを踏まえた上で、一般的とされている書き方について触れておきます。
収支計算書の書き方
収支の部と支出の部という大きな区分を、最初に設定します。
収支計算書類は、収支と支出に関する書類なので、これは当然でしょう。
次に収支と支出の部それぞれで、科目を設定します。
科目とは、金銭の具体的な項目のことです。
その金銭がどのような理由で、収入もしくは支出として存在したのかを示すための事項です。
例えば収入に関する科目の具体例として、前年度繰越金や会費、補助金や助成金といった項目が上げられます。
また支出に関する科目の具体例については、管理費や、備品購入費、交通費や積立金などが一般的です。
そして摘要の記載も必要になります。摘要とは概要のことで、その科目の具体的内容を意味します。
例えば、収入の部である会費が町内会費であることや、支出の部である備品購入費が、ティッシュペーパーやボールペンの代金であることの記載が、摘要となります。
当期の合計収入の他に前年度繰越金がある場合は、両者を合わせて収入の合計を算出します。
そして当期の支出合計と次年度繰越金があるときは、その両方を合わせて支出の合計を算出します。
また収支計算書は、決算書類としての意味を持つので、収入の合計金額と支出の合計金額は必ず一致していなければなりません。
損益計算書について
実際企業が活動する際に、どうしてもかかる費用があり、それを固定費と呼びます。
固定費の具体例として、家賃や光熱費、人件費などです。
一方で、売上に比例してその金額が変わる費用があり、変動費と呼ばれています。
変動費の主な例として商品の原価などが挙げられます。
その固定費と変動費の額を合計して、売上額と比較することにより利益と損失の境界線である、損益分岐点を見極めることができます。
そしてその損益分岐点は、損益計算書から見ることができるのです。
損益計算書における5つの利益
損益計算書は、収益、費用、利益の3つから構成されています。
利益と収益は一見似たような言葉ですが、その意味ははっきり違います。
利益は儲けを意味し、収益は収入や売り上げを意味しています。
そしてその利益はさらに5つに分類されており、重点的に見るべきポイントと言えるでしょう。
その5つの利益とは、①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期利益、⑤当期利益の5つです。
①売上総利益について
②営業利益について
営業利益とは、売上総利益から事業に必要な経費を差し引いて残った利益のことです。
事業に必要な経費とは、家賃や人件費、光熱費や広告費などです。
これらの経費は一般的に、販売費及び一般管理費と呼ばれ、事業や商売を行う上で必須の費用とされています。
③経常利益について
経常利益とは、本業以外に行っている副業での収入を含めた利益のことです。
一般的に企業はリスクを回避するため、本業の他にも副次的な収入源を確保しています。
従って本業だけでなく副業をも含めて算出された利益が、その企業の本当の収益力と言えるでしょう。
一般的な副業としては主に、家賃収入や貸付金の利息収入、株式の配当金などが上げられます。
④税引前当期利益について
税引前当期利益とは、経常利益に特別な事情により発生した特別利益と特別損失を含めた利益のことです。
特別利益及び特別損失は、特別事情によって偶発的に生じた利益や損失となります。 損益計算書とは
従って税引前当期利益では、その企業の通常の収益力は見て取れず、あくまで一時的な利益を示すに過ぎないと認識されています。
特別利益の主なものとして、不動産や株式の売却で得た利益が上げられます。
また特別損失の主なものとしては、火災や盗難による被害などです。
⑤当期利益について
当期利益とは、税引前当期利益から税金を差し引いて残った利益のことです。
企業も社会活動を営む上で、納税は欠かせません。 損益計算書とは
法人税や住民税、事業税などを支払う義務が生じます。
その税金を支払った上で、手元に残った最終的な利益が当期利益となります。
当期利益とは別に当期純利益という用語もありますが、どちらも同じ意味です。
収支計算書と損益計算書の違い
以上の説明から、収支計算書は現金の流れを知るための計算書であり、損益計算書は企業の利益状態を知るための計算書ということになります。
従ってその企業の経営状態まで知りたければ、収支計算書だけでなく損益計算書まで見ておくべきでしょう。
また利益状況まで踏み込む必要はなく、資金の使用用途等を知りたいだけの場合は、収支計算書を見ておけば足りると言えます。
その目的に応じて、収支計算書と損益計算書を使い分けることが大切です。
企業は他の企業と取引をするときに、その企業が信用に値するかを判断しなければなりません。
その際に収支計算書及び損益計算書は、判断材料としてとても有益な決算書類になります。
各計算書を正確に読み解き、時間をかけずにその企業の財務事情を判断することは、企業経営上重要な戦略と言えるでしょう。
この機会に収支計算書及び損益計算書に対しても知識を深めていただけたらと思います。
損益計算書とは
1 財務諸表とは
また、キャッシュフロー経営といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、黒字倒産といったこともあるように、ビジネスがうまくいっているかどうかを把握するためには、 利益だけではなくキャッシュの動きも見ておくこと が重要です。損益計算書と貸借対照表を使って加工し、通常1年間の会計期間で、どこでキャッシュを生み出し、何にキャッシュを使ったのかを表しているのがキャッシュフロー計算書です。なじみのない方も多いでしょう。これは、回を改めて丁寧に解説したいと思います。
2 財務諸表の読み方のコツ
また、1期分だけの財務諸表を見ても、それが良いのかどうか、ビジネス上のどのような特徴があるのかは見えてきません。そこで、何度も決算を経験していれば 自社のものを3期分、加えて財務状況を公開している(例えば、上場会社)同業他社のものと比べてみる とよいでしょう。
3 もうけを表す損益計算書(P/L)
売上高は損益計算書の最初の行に登場しますので、トップラインとも呼ばれています。売上は、お客様に提供したモノやサービスの価値がお客様に認められたかどうかを表すので、言うまでもなく大切です。 前年度から伸びているのか、市場の伸びやライバル会社の伸びと比較してどうか といった観点で見ます。他社との比較では、上場会社では大き過ぎるし、ライバル会社の財務数値は手に入らないということもあるでしょう。そういうときは銀行に聞いてみるのもよいでしょう。もちろん銀行は個社の数値を他人に口外することはありませんが、たくさんの取引先があるので、同業の中で自社がどのような状況にあるのかといった助言はしてくれるかもしれません。
売上高と4つの利益を見ると、 モノやサービスそのものに稼ぐ力はあるのか(売上総利益)、本業で利益を残せているのか(営業利益)、支払利息など財務面が業績の足を引っ張っていないか(経常利益)、最終的に利益を残せたのか(当期純利益) が確認できます。また、売上高に対する各利益の割合を見ると、効率よく利益を上げることができているか、過去あるいは他社との比較において自社の生産性を評価することができます。
損益計算書(PL)の見方と代表的な指標を解説| 経理を0から勉強するシリーズ 3
財務諸表の概要 と 貸借対照表の見方 を前回までお送りしてきましたが、今回は損益計算書の見方をご説明します。
貸借対照表が「ある時点の企業の財政状態」を表す財務諸表であるのに対して、損益計算書は「一定期間における企業の経営成績」を表す財務諸表です。企業は営業活動とそれに付随する活動によって利益を獲得しています。
売上からザックリ集計した費用を差し引いて「儲けはいくら」といったやり方を“ドンブリ勘定”といいますが、このやり方では利益を正しく測定することはできません。
経理部門では企業のすべての取引を複式簿記のルールにもとづいて、それらを売上に直接関係するものか、あるいは営業活動全般に関するものかなどを区分して、勘定科目という単位で集計し損益計算書を作成します。
では、損益計算書で計算される「利益」をみてみます。 損益計算書とは
利益の計算では獲得した収益からそのために支出した費用(コスト)を差し引いて計算していきます。売上高から純利益を計算するまでの流れをみていきましょう。
■営業損益計算までの手順
1. 売上総利益の計算
売上総利益=売上高-売上原価
売上高とは、会社の事業目的に沿った営業活動によって製品・商品・サービスなどを販売・提供することによって得られた収益の合計額です。
売上原価は、その販売商品を仕入れた原価(仕入原価)や製品を製造にかかった原材料費や外注費など(製造原価)の合計額です。
売上総利益は粗利(アラリと読みます)という言い方でも呼称されます。一般に、商社のように商品を仕入れて販売する企業の場合は売上総利益率が低く、メーカーのように製品を製造し販売する企業の場合には売上総利益率が高いといわれています。
※収益の認識基準について
通常、売上高などの収益は商品や製品の販売時点(納品時)に収益として認識します。ただし工事などの場合は、工事が完成した時点で収益を認識する基準(工事完成基準)や工事の進行に応じて収益を認識する基準(工事進行基準・出来高)などの例外があります。
2. 営業利益の計算
営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
いわゆる営業経費は、商品・製品の販売やサービス提供などの営業活動にかかったコストを指します。そこから、その営業にかかった費用である「販売費」とその管理にかかった費用である「一般管理費」とに分けられますが、損益計算書では「販売費及び一般管理費」として区分されます。
営業利益は、どれだけその会社が本業で稼ぐ力を示しているものだといえます。
■経常損益計算までの手順
3. 経常利益の計算
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
経常利益は「ケイツネ」などと呼ばれることもあります。“営業外”とされる収益及び費用は、企業の事業目的に沿った主たる営業活動ではないものの、その取引が反復継続される取引が集計されるグループです。具体的には「受取利息・配当金」や「支払利息」などです。
ここで計算される経常利益は、本業だけではなく資産運用や財務状態といった企業の経常的な活動(突発的ではなく普段から行っているような活動)の成果を表すため、損益計算書上の中でも重要視される傾向があります。そのため、新聞などのニュースでも「○○自動車の経常利益が過去最高を記録」や「株式会社△△、為替の影響で経常損失に転落」などといった見出しになることがあります。
■利益確定までの手順
4. 税引前純利益の計算 損益計算書とは
税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
特別利益や特別損失はここまでの計算区分には含まれない、すなわち、主たる営業活動から生じたものではなく、かつ、継続的・経常的に発生するものではない、文字通り“特別”な取引が区分されます。
具体的には、建物や車両などを売却した場合の固定資産売却益(損)や長期保有を目的としていた有価証券の売却時に発生する投資有価証券売却益(損)、税務調査時に指摘を受けた項目を修正するための過年度損益修正益(損)などが挙げられます。
5. 純利益の計算
当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税および事業税
最後に計算される利益が当期純利益です。企業は、その獲得した利益に応じて法人税などの税金を負担します。その税額計算のベースが税引前当期純利益で、計算された税額を差し引いて当期純利益が計算されます。この当期純利益は「分配可能利益」とも呼ばれ株主への配当などの原資となります。
■損益計算書で収益力がわかる
では、貸借対照表同様、損益計算書もポイントとなる指標をいくつか見ていきましょう。
損益計算書ではその企業の収益力をチェックすることができます。
・売上総利益率と売上高原価率
売上総利益率 = 売上総利益/売上高 × 100
売上高原価率 = 売上原価/売上高 × 100
売上総利益率は、販売した商品・製品・サービスから売上原価を引くとどれだけの儲けがあったのかを表す指標です。その反対に売上高原価率は、販売した商品はどれだけの売上原価がかかっていたのかを示す指標です。
したがって、売上総利益=売上高-売上原価ですから、売上総利益率が30%であれば売上高原価率は70%となります。
先述したとおり、損益計算書では売上総利益以外にも営業利益や経常利益が計算されます。売上高営業利益率や売上高経常利益率も重要な指標です。数式は次の通りです。
売上高営業利益率 = 営業利益/売上高 × 100
売上高経常利益率 = 経常利益/売上高 × 100
■ROAとROE
前回の記事 でも書きましたが、企業は企業活動の資金を外部から調達しています。調達した資金が効率よく活用されているかどうかは、利害関係者、とりわけ株主などの資金提供者にとっては重要な指標になります。
・ROA・・・総資産利益率(Return On Asset)
ROA = 当期純利益/総資産 × 100
総資産は外部から調達した資金と自己資本の合計で企業が調達した資金のすべてです。
ROAは利益を獲得するために企業の有する資産をどれだけ効率よく活用しているかを表す指標ですから数値が高ければ高いほど良いといえるでしょう。
・ROE・・・自己資本利益率(Return On Equity)
ROE = 当期純利益/自己資本 × 100
自己資本は株主資本と言い換えることができます。
ROEは株主から調達した資本でどれだけの利益を獲得したかを示す指標となります。
ROEを高めるためには、分母である自己資本が同じであれば当期純利益を高める必要がありますし、逆に、分子である当期純利益が同じであれば自己資本を減らす必要があります。
自己資本が減るということは、企業の根幹となる資本への安全性に問題が生ずる可能性があります。したがって、この指標が上昇しているとしてもどのような理由で上昇しているかを見極める必要があります。
ここまであげた指標は利益の獲得という観点でしたが、“回転率”という指標も重要です。
多くの企業は、不要な在庫をできるだけ持ちたくないと考えさまざまな対策を講じています。そのような対策が功を奏しているかどうかを「棚卸資産回転率」という指標でチェックすることができます。
・棚卸資産回転率
棚卸資産回転率 = 売上高/棚卸資産
この指標の単位は「回」です。
この数値が高いということは、棚卸資産が短期間に効率よく売上獲得につながっていると考えられ、在庫管理の有効性も裏付けられることとなります。「当社は在庫管理の効率改善を図っています」と主張する企業が、実際に在庫管理の業務改善が達成されているかどうかはこの指標を目安に確認することが可能です。
このように、損益計算書や貸借対照表からは企業のいろいろな“顔”や“体調”を推し量ることができます。ここまでご紹介した指標以外にもたくさんの指標があります。興味を持たれた方はぜひ書籍などで調べてみてください。
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