明治大学在学中より、雑誌の編集に携わり、卒業後にフリーランスの雑誌記者として独立。1988 年より女性誌、マネー誌にて、お金の記事を執筆。1999年にファイナンシャルプランナー資格取得。2010年にファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所を設立し、執筆に加えて、家計相談やセミナー講師も行なう。2012 年よりフォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)の活動に参加、消費者教育を担当。近著に『年収200 万円の私でも心おだやかに毎日暮らせるお金の貯め方を教えてください!』(SB クリエイティブ)、『まだ間に合う! 50 歳からのお金の基本』(エムディエヌコーポレーション)、『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)などがある。
つみたてNISA|3つのメリットと3つのデメリット
つみたてNISAの最大のメリットは「運用益(儲け)が非課税になる」という点です。
他にも、「投資ビギナーにも安心の投資制度が整っている」などのメリットもあり、投資初心者で、投資に不安感を持っている人にもおすすめの制度です。
しかし一方で、「商品の数が少なく、選択肢が少ない」「年間の投資金額が少ない」といったデメリットもあります。
また、「必要になった時に引き出せるのか」「非課税期間が終わるとどうなるのか」など、分からない点が多いという声も多く聞かれます。
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、平成30年(2018年)から始まった新しいタイプのNISAです。
通常、金融商品を運用して利益が出れば、その利益には税金がかかります。
しかし、 NISA(少額投資非課税制度)を使えば、その利益は非課税(税金がかからない)となります。
(1)つみたてNISAの3つのメリット
②少額からスタートしコツコツ資産運用できる
つみたてNISAは、株式なら約1万円~、投資信託なら100万円から投資をスタートすることができます。「投資はリスクがあって怖い」という人も、この金額なら始めやすいのではないでしょうか。
また、そもそもつみたてNISAは年間の投資額が40万円なので、大きな投資をすることはできない制度となっています。したがって、「手堅く安定して運用したい」というケースより、どちらかといえば「長期で分散投資をしたい」というケースに向いているといえます。
(2)つみたてNISAの3つのデメリット
①損益通算、繰越控除ができない
NISA口座以外で保有している上場株式や株式投信の場合なら、損失が出れば確定申告をすることで、損失と利益を相殺する「損益通算」をすることができます。また、翌年以降3年間その損失を繰越す「繰越控除」をすることができます。
しかし、NISA口座では、利益も損失もないものとみなされるので、損益通算もできませんし繰越控除もできません。
したがって、非課税期間が終了した時に損失が出ていても、その損失を繰越すということはできません。
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②未使用の非課税枠は持越せない
非課税枠の40万円を1年間で使い切らないで非課税枠が余ったとしても、余った非課税枠を翌年に繰越すことはできません。
金融機関によっては細かい単位の設定ができず、毎月の積みたてだけでは枠を使い切ることができないことがあります。
たとえば、今年は30万円しか投資しなかったとしても来年の非課税枠が50万円になることはありません。
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(3) 再投資が「購入」とみられる
お金を効率よく増やすための鉄則が、「複利の利用(利息を元本に組み入れ、その合計を次の期間の元本とすること)」です。
しかし、つみたてNISAで再投資する際には、分配金を再投資した分が新規購入とみなされてしまい、その分の非課税枠が消費されてしまうので注意が必要です。
例えば、年間投資限度額の40万円を投資する予定で、月33,333円(40万円÷12)を投資していて、途中で分配金1,000円を元本に入れて再投資すると、年間の投資額が400,996円となり、投資限度額を超えてしまうことになります。金融機関によっては、限度額を超えると12月の買い付けができなくなったり課税口座で再投資されたりすることもありますので、注意しましょう。
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2024年からつみたてNISAはどう変わる?
(1)口座開設可能期間が5年延長
(2)つみたてNISAがより若い人向けのNISAに
つみたてNISAの3つの疑問点
(1)いつでも引き出せるの?
(2)非課税期間が終わるとどうなるの?
つみたてNISAの非課税期間が終わると、その後は課税口座(特定口座または一般口座)で商品を保有することになります。 そして、その後の分配金や売買益については、その口座で課税されることになります。
この時、つみたてNISAで購入した金融商品の所得価格はリセットされ、その時の価格になります。実はこれが原因で、損失があっても税金がかかってしまうこともあります。
購入した商品が20年後に値上がりしていれば問題はありませんが、値下がりしてしまった場合には、思わぬ税金がかかることもありますのでその点は注意が必要です。
(3) 金融機関の変更はできるの?
NISA口座では、取引する金融機関を年単位で変更することができます。
変更手続きは変更を希望する年の前年10月1日から変更を希望する9月30日までとなっているので、金融機関を変更したい時には早めに手続きを行うようにしましょう。
なお、金融機関変更後も購入した商品は非課税期間20年間が過ぎるまでは、変更前の金融機関のNISA口座で保有することができます。ただし、変更前に購入した商品を変更後の金融機関のNISA口座に引き継ぐことはできません。
以上、つみたてNISAのメリットやデメリット、2024年からの改正ポイントについてご紹介しました。
NISAは、投資ビギナーには最適な制度ですが、お金は目的に応じて管理方法を使い分けることが大切です。また、つみたてNISAだけではなく、iDeCo(イデコ)や保険など、目的や必要となる時期に合わせてお金を管理していくことも必要です。
特に、iDeCo(イデコ)は運用益が非課税になるだけでなく、積立時に所得控除され、受取時にも税制優遇があるとてもお得な制度です。
不明点や疑問点は、税理士等に相談しながら、上手に資産形成をしていくようにしましょう。
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