キャッシュフローとは何か
■営業活動によるキャッシュ・フローはプラスですか?
1.営業活動によるキャッシュ・フローがプラスの場合
「営業活動によるキャッシュ・フロー」はプラスであることが鉄則です。これがプラスの会社は、まずは正常に事業活動が機能していると言えます。
では次に、「投資活動によるキャッシュ・フロー」と見比べてみましょう。
(1)営業活動によるキャッシュ・フローのプラスが
投資活動によるキャッシュ・フローのマイナスを上回っている場合
この場合は、資金に余裕のある優良な会社と言えます。
営業活動によるキャッシュ・フロー
+ 投資活動によるキャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フロー
(キャッシュフローとは何か 2)投資活動によるキャッシュ・フローのマイナスが
営業活動によるキャッシュ・フローのプラスを上回っている場合
たとえ営業活動によるキャッシュ・フローがプラスであっても、投資活動によるキャッシュ・フローのマイナスがこれを上回っている会社は要注意です。
それは、 会社が事業を続けることによって稼ぐお金よりも、会社が事業を維持するために出ていくお金の方が大きい ことをあらわしており、無理な設備投資を行っていると見なされます。営業活動によるキャッシュ・フローがプラスでも、金融機関は「資金の赤字」として位置付け、評価は低くなるのです。
例外として、急成長する会社などにおいては先行投資の支出が増大し、フリー・キャッシュ・フローがマイナスになることもあります。この場合には、翌年以降において、営業活動によるキャッシュ・フローが相当に増大するでしょう。
2.営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの場合
この場合は典型的な赤字経営です。このマイナスが継続すると経営危機をもたらしてしまいますので、早急に改善策を立てる必要があります。損益計算書でマイナスの要因を調べてみましょう。
(1)税引前当期純利益がマイナスの場合
この場合は事業の採算性を改善し、収益性を高めるための方策が求められます。
- 売上の増大
- 粗利益率の改善
- 固定費の削減
(2)税引前当期純利益がプラスなのに
営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの場合
税引前当期純利益がプラスであるにもかかわらず、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになる場合もあります。このような会社は、たとえ損益計算書で黒字を計上していても、資金面では赤字経営であることを認識し、営業活動によるキャッシュ・フローの改善策を立てましょう。
とりわけ、営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが次のような場合には要注意です。
●売上債権の増加によって資金のマイナスが生じている場合
売上債権が増加した場合には、その根拠を明確に把握しておくことが重要です。
■売上債権増加の主な理由
1. | 売上高が増加している。 |
2. | 期末日近くの売上高が増加し、その結果、売上債権の残高が大きくなっている。 |
3. | 得意先の資金繰りが悪化し、その回収が滞っている。 |
4. | 自社の売上製品に関して重大なクレームがあり、得意先が代金を支払わない。 |
5. | 期末日近くに子会社などに押込み販売を行っている。 |
6. | 利益操作によって、売上高と売上債権がともに大きくなっている。 |
上記の理由のうち1.と2.以外の理由は、会社に重要な問題が潜んでいることを示しています。売上債権が増加している場合は、たとえ損益計算書がプラスであっても、資金的な意味において問題をはらんでいる可能性があることに留意してください。
●棚卸資産の増加によって資金のマイナスが生じている場合
棚卸資産が増加した場合にも、その根拠を明確に把握しておくことが重要です。
■棚卸資産増加の主な理由
キャッシュフローとは何か
1. | 売上高が増加している。 |
2. | 翌年度の第一四半期において大口の売上予定があり、そのために棚卸資産が増加している。 |
3. | 必要以上に商品や原材料などを購入しすぎている。 |
4. | 技術上の問題などがあり、製品がなかなか完成しない。 |
5. | 売残りの製商品をたくさん抱えている。 |
6. | 利益操作によって、売上原価が過小に計上されている。 |
上記の理由のうち1.と2.以外の理由は、会社に重要な問題が潜んでいることを示しています。棚卸資産が増加している会社は、その原因を分析し、増加している理由に問題がないかどうかを検討してください。
(3)その他
売上債権と棚卸資産には大きな変化がなく、他の原因によって営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになっている場合には、具体的にその原因を分析しましょう。
たとえば、その他の流動資産が増加しているのであれば、その資金が何に投入されたのかを明確にしておくことが必要です。 これは経営者が自社の資金の動きを把握するためにも、金融機関に対して自社の現状を正確に説明するためにも必要なことなのです。
●投資活動によるキャッシュ・フローはプラスですか?
設備投資などの支出があるため、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスになるのが通例です。逆にこれがプラスの場合は、それがどのような原因によって引き起こされたかを検討する必要があります。
-
キャッシュフローとは何か
- 不動産などの有形固定資産の売却
- 営業譲渡、無形固定資産の売却
- 有価証券の売却
- 貸付金の回収
●健全な経営のために
近年、金融機関は、個人保証や担保提供に依存しない融資方法を推進していますが、 キャッシュフローとは何か その中でキャッシュ・フロー計算書の重要性はますます増大しています。
キャッシュ・フロー計算書は資金の増減を表示していますので、損益計算書のようにその作成に見積りの介入する余地が少なく、客観性のあるデータが提供されます。たとえば減価償却の方法や棚卸資産の評価方法などを変更すると、損益計算書の利益額は変化しますが、営業活動によるキャッシュ・フローの額は変化しません。
キャッシュ・フロー計算書からは、ここで紹介したこと以外にもさまざまなことが分かります。 キャッシュ・フロー計算書を作成して、会計専門家のアドバイスを受けることはとても有効です。 健全な経営のために、また金融機関へのプレゼンテーションのためにもぜひキャッシュ・フローを重視して、将来に向けてキャッシュ・フローの改善を行ってください。
キャッシュフローとは何か
英語では Cash Flow Statement ということから、C/Fと表記されることが多いです。
営業活動によるキャッシュフロー
営業CFはまずプラスであることが重要であり、 キャッシュフローとは何か プラスが大きければ大きいほど良い とされます。
投資活動によるキャッシュフロー
投資CFは、 マイナスの方が望ましい です。
これから成長していく企業は設備投資に積極的にお金を使っていくはずなので、必然的に投資CFはマイナスになるはずだからです。
「投資有価証券を売って利益を得た」だけなら問題ないですが、「主力事業に関わる固定資産を売却した」と聞くと「何か問題があったのかな?」と不安になりますよね。
財務活動によるキャッシュフロー
基本的には借金返済を進めたり配当支払いをする余裕がある企業の方が安心ですから、財務CFは マイナスの方が望ましい と言えます。
キャッシュフローから分かる会社の8タイプ
キャッシュフロー計算書は「営業・投資・財務」の3つのキャッシュフローがプラスなのかマイナスなのかを見るだけで、会社の大まかな全体像を把握できるという特徴があります。
経営判断に欠かせない決算書の読み方 3種類の違いと関係性を解説
決算書はすべての経営判断の土台になります
決算書は何のためにあるのか
- 専門用語が多い
- 数字の意味が分かりづらい
- 決算書の何を見れば良いか分からない
- 決算書に書いてある数字の意味を理解できる
- 自社の業績を常に把握できる。
- 今後の数値計画を立てやすくなる
決算書類の法的な位置づけ
金融商品取引法
決算書に関する3つの法律のまとめ(以下に紹介する画像はいずれも筆者作成)
決算書3種類の特徴と違い
貸借対照表
貸借対照表のイメージ図
損益計算書
損益計算書のイメージ
損益計算書は、英語でプロフィットアンドロスステートメント(Profit and loss statement)と言われ、略して「P/L」と書くことがあります。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書のイメージ
経営に関係し合う3つの書類
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書が関係するイメージ図
【簡単図解】減価償却がわかれば資金繰りがわかる!減価償却と借入金とキャッシュフローの関係
ただ、支出時に一括費用計上をした場合に、それをカバーできるだけの収入があれば、取得時に取得原価分だけ利益が減少し、税金や利益処分による社外流出が防げるので、長期的には、減価償却をした場合と効果は変わりません。しかし、取得原価が多額である場合で、それを一括費用計上したことにより損失が出た場合は、対応する内部に留保すべき資金(収益)がないので内部留保効果は発揮されません。配分された減価償却費のほうが毎年ちょっとずつの費用が計上されるので、この効果を得られやすくなります。ただ、損失が出た年はこの効果はなくなります。(繰越欠損金の期限内で将来利益が出たときに節税効果はありますが。)
あくまでも、この減価償却費計上による自己金融効果や節税効果は、利益の出ている会計期間において、結果的に得られる効果です。
ただ、この効果を知っていると、 利益が出ている前提で 、減価償却費分はまるまる現金として社内に残るので、借入金で減価償却を購入した場合の資金繰り計画に役に立ちます。
減価償却費分を、借入金の返済の資金源にできるのです。
借入金と減価償却とキャッシュの関係
「利益 +減価償却費 」の金額で、借入金を何年で返済できるか?をチェックする債務償還年数というものがあります。(利益は、営業利益だったり、税引後当期純利益だったり、場合によって異なります)
借入金の返済は費用ではない
借入金の返済は、実際に現金の支出を伴いますが、会社の経営成績とは関係ないので、財務状態を表す貸借対照表に残高が計上されているだけで、経営成績を表す損益計算書に費用として載ってきません。(支払利息は、営業外費用としてPLに計上されます)
減価償却が支出を伴わない費用で、借入金の返済は費用として計上されな支出で、逆の性格を持っています。
これは、損益と収支がズレる大きな原因で、今後、キャッシュフロー計算書を理解する上でとても重要なポイントです。
上記のように、ざっくりいうと、「利益+減価償却費」が借入金の返済の資金源になります。
借入金で有形固定資産を購入した場合
有形固定資産は、毎期減価償却費計上により、資金が社内に残る。
→その減価償却費により社内に残った資金で借入金を返済する。
このように、(損失が出ていない場合は)減価償却費を計上することにより毎期安定的な返済資金を確保できます。借入金にて有形固定資産を購入する際は、利益と減価償却期間と返済期間のバランスを考える必要がありますね。
もし減価償却がなかったら
簡易キャッシュフローとEBITDA
簡易キャッシュフロー
簡易キャッシュフローは、先ほどの債務償還年数を算定するのにも用いられた 「利益+減価償却費」 キャッシュフローとは何か で求められます。
「税引後利益+減価償却費」だったり、「営業利益+減価償却費-法人税」だったり、使用目的等によっても計算方法は様々ですが、基本は 「利益+減価償却費」を」アレンジしていきます。
簡易キャッシュフローは、会社が投資や借入金の返済に回せる事業から得た資金を簡易的に求めたものです。
EBITDA
EBITAはEarning Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略で、支払利息と税金を控除前の利益に減価償却費を足したものです。
ざっくりいうと、「営業利益+減価償却費」で、先ほどの簡易キャッシュフローと同様、事業で儲けたキャッシュを簡易的に求める指標です。
減価償却自体は資金を生み出さない
事業から得たキャッシュが「利益+減価償却費」なので、減価償却費を計上したら資金を生み出す魔法のような錯覚が生まれますが、非現金支出費用である減価償却費の計上により、稼いだ資金を社外に流出するのを防ぐ効果があるだけです。資金を稼がなくてはその効果も得られません。
減価償却費とキャッシュフロー計算書の関係
「利益+減価償却費」で求めるということがわかりました。「利益+減価償却費」はキャッシュフロー計算書を作成する上で基礎となる重要なポイントです。
キャッシュフロー計算書の見方と活かし方
会計
キャッシュフロー計算書とは?
要は、 お金がどこで増えて、どこで減ったのか、そして期末にいくら残っているのか を示すものです。
キャッシュフロー計算書の区分
営業活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフロー
従って、 将来に向けて積極的に設備投資を行う会社は、この区分がマイナスになりやすい のです。
財務活動によるキャッシュフロー
※フリーキャッシュフロー
キャッシュフロー計算書の見方
A社のケース
B社のケース
C社のケース
キャッシュフロー計算書の活かし方
これはキャッシュが在庫になったままであることを意味します。
これでは 新たな設備投資もできませんので、早く事業の立て直しを行い、当期利益と営業活動によるキャッシュフローを黒字化することが必要 です。
アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。 磯竹克人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。
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